木内一裕「アウト&アウト」
木内一裕「アウト&アウト」
本当は映画を見たかったんだよ…2018年11月に公開されたけど、見に行けないままあっという間に公開終了。公開2週目には、県内唯一の映画館での上映回数が激減してたから、動員少なかったんだろうな…
ともかく映画を見そこね、円盤待ちなので先に原作小説を読むことにした。
これはサスペンス?ハードボイルド、ノワール?…と言えば良いのかな。
☆あらすじ(ネタバレあり)
主人公は元ヤクザの私立探偵(そんなに仕事してないけど)で、40代独身。訳あって小学二年生の女の子、栞を預かっている。
仕事を選びまくってる矢能だが、ある日安田という男から依頼が入りビルの一室へ向かうが、そこには死体となった安田がいた。更には奇妙なマスクを被った男に、矢能ははめられてしまう。
マスクの男、数馬が用意周到に安田を殺害したが、まさかの矢能の出現によって計画が狂ってしまった。しかし、不要な殺人をすることなく、そして矢能に不利な状況を作り、殺人現場を去ることができ、達成感で胸がいっぱいだったが…
そもそも数馬が安田を殺したのは師匠の名を受けたことにあり、更には師匠は国会議員の鶴丸に頼まれたことであった。
数馬は矢能を殺すべく動き、栞に近づき矢能を挑発する。数馬は警官に撃たれて死亡してしまうが、数馬の人間に触れた矢能は、亡くなる直前の数馬から、鶴丸への制裁を依頼される。
鶴丸自身は殺人を依頼した罪にしか問えない。矢能は鶴丸に死体遺棄で逮捕されるようにはめていく。
☆感想
普段、小説はミステリ(特に新本格?というのか)を好んで読んでるんだけど、これは良かった。映画が見れなかったから代わりに読んだとは言え、面白かった。非常に読みやすくて、テンポも良く一気に読み終わった。
なかなか爽快感のあるスッキリとしたラスト!
out and out=徹底的に。と書いてあったけど、まさにその通りの結末だった。
そして追い込み方の手段が"out"という事でもあるのか、矢能の使う人や手段はひたすらヤクザ。矢能はあくまで”元”ヤクザなんだけど、出てくるのは、死体の掃除屋に、ヤクザの工藤篠木、情報屋、警察…シリアスなんだけど、やり取りもちょこちょこ面白い。
そして、栞とのやり取りに至ってはなんだか夫婦(しかも妻に頭が上がらない感じ)みたいだしでちょっとクスリとさせられるし、ウルっとさせられた。いやー、栞は小学二年生とは思えないぞ。
1章が矢能視点で事件が、2章が同じ事件を数馬視点で、3章は矢能視点と思わせて矢能と数馬が交互に、4章で鶴丸にとどめを刺す、という感じ。
4章の鶴丸への追撃も徹底的でこれでもかという程やってて面白いけど、更にその後の栞とのやり取りにちょっとうるっときてしまったと同時にニヤけさせられたというか。続編では親子関係になってるのかな。続きを読まなければ。
しかも、これシリーズの2作目なのね。
1作目は、これの前日譚で「水の中の犬」
これは矢能は脇役みたいだけど、栞の過去が分かるみたいだから、これは読まないと。
2作目が、この「アウト&アウト」
3作目が「バードドッグ」
4作目が「ドッグレース」
順番に読んでみよう。
そして映画のDVD楽しみだ。矢能は40代半ばの設定で主演は遠藤憲一さんで実年齢を考えるとちょっと外れるんだけど、容姿としてはハマってるんだよね。「ハンサムではないが、醜男でもない。和製ウィレム・デフォー」そして栞の玉季ちゃんもぴったり。円盤はよ!近隣ではもう上映してないから円盤待ちきれないよ。