歌野晶午「ハッピーエンドにさよならを」
歌野晶午と言えば、何と言っても「葉桜の季節に君を思うということ」だけど、ふと目に入った本書を読んでみた。読んだのは単行本版。
短編集であり、タイトル通りハッピーエンドなぞあるわけがない物語の数々。
一つ一つが短く(しかも物によっては3ページ位のものも)、テンポ良く読みやすい。
そして、本当にどれも結末は後味の悪いもの、読後感の悪いものばかり。初っ端の「おねえちゃん」からぶっ飛ばしてて好みが分かれると思う。まぁこういうの苦手な人はタイトルで察するから大丈夫なのかな。私はこういうの好きだけどw
個人的に好きなのは「おねえちゃん」「防疫」「殺人休暇」「in the lap of the mother」「尊厳、死」
以下、ネタバレ。
「おねえちゃん」
初っ端からこれです。
女子高生と叔母のテンポの良い会話から始まる話。
本当に救いのない。でも、おかげで次の短編もどんどん楽しみになってきたので導入としても、掴みはオッケー…と私は思っている。
「サクラチル」
叙述と言って良いよね。叙述の定番ネタの気もするけど、しっかり騙された。
「天国の兄に一筆啓上」
殺人事件の被害者となった兄への手紙。
時効を迎えたが未解決で…
「消された15番」
野球の甲子園に出た息子を思う母は…
正直、これは私には合わなかった。
「死面」
夏になると訪れる母の実家の田舎での物語。亡くなった少女のデスマスク。
少女を殺した犯人より、最後のページでどんでん返し。
「防疫」
娘を有名幼稚園・小学校になんとか入学させたい母親がどんどんヒートアップしていく話。
ヒートアップしすぎて虐待になっていくけど、さらにそれを凌駕する娘の行動と結末。
「玉川上死」
クラスメイトとのゲームで玉川を死体のふりをして流れいく秋山。
そんな中起きる殺人事件。
犯人当てより、その動機が明らかになる様が面白い。
「殺人休暇」
ストーカー被害に遭っているOLが休暇を取った時に取る行動は…
最後、結局どうなったのか。
あえて、読者の想像に任せた結末が怖い。
「永遠の契り」
大学生の男女の甘い話…で終わらないよね。
「in the lap of the mother」
パチンコにハマる母の話。
幼子を連れてパチンコに行き、「車内に放置している親とは違う」と虐待や育児放棄にならないように気をつけてるかのように言っているが…
可哀想すぎて悲しくなる。リアルに起こりうるのでは。
「尊厳、死」
とあるホームレスが群れずに尊厳を持って死にたいと思っているが…
叙述。あー、やられた。